この回で扱う6語は budget、persuade、thumb、swift、flu、reluctance です。いずれも catchspan の聴覚語彙テストの出題プールから選んでいます。各語につき、実際によく使う文を1つ、アメリカ英語での言い換えやトリビアを1つ、そして音の勘どころを1つずつ扱います。音声と、その台本の全文をこのページに置いています。
音声
今日の6語
| 難易度の目安 | 語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|---|
| 3000語レベル | budget | noun | 予算 | /ˈbʌdʒɪt/ |
| 3000語レベル | persuade | verb | 説得する | /pɚˈsweɪd/ |
| 4000語レベル | thumb | noun | 親指 | /θˈʌm/ |
| 4000語レベル | swift | adj | 迅速 | /swˈɪft/ |
| 5000語レベル | flu | noun | 流感 | /flˈuː/ |
| 5000語レベル | reluctance | noun | 抵抗 | /ɹɪlˈʌktəns/ |
今日の6文
- We’re a little over budget this month.
- It took me twenty minutes to persuade him to come.
- I slammed my thumb in the car door.
- Thanks for your swift reply.
- I think I’m coming down with the flu.
- She agreed, but with some reluctance.
台本(全文)
あかりこの前、海外ドラマの字幕を消してみたんです。……半分も、分かりませんでした。
森田その「分かりませんでした」が、今日いちばん大事なところです。catchspan ラジオ、今日の6語。お相手は、森田です。
あかり生徒役の、あかりです。森田さん、よろしくお願いします。
サラAnd I’m Sarah. Hi, everyone.
森田この番組は、英単語を目ではなく、耳で覚え直す番組です。今日は単語を6つ。そして、その単語が入った、実際によく使う文を6つ。やるのはこれだけです。
あかり6つだけ、ですか。ちょっと少なくないですか。
森田少なくていいんです。あかりさん、budget という単語、意味は分かりますよね。
あかりはい。予算、ですよね。
森田では、会話の中で耳から飛んできたとき、一瞬で分かりますか。
あかり……たぶん、そこで止まります。
森田そこなんです。意味を知っている語と、聞いて分かる語は、別ものなんです。今日はその差を、6語ぶんだけ埋めにいきます。では、サラさん、今日の6語をお願いします。
サラSure. Today’s pickup words are: budget. Persuade. Thumb. Swift. Flu. And reluctance.
森田予算、説得する、親指、迅速な、インフルエンザ、そして、気が進まないこと。難しさの目安でいうと、最初の2つが3000語レベル、次の2つが4000語レベル、最後の2つが5000語レベルです。
あかり5000語レベル……私には早いのでは。
森田それが、そうでもないんです。5つめで、その話をします。
budget — 予算(3000語レベル)
森田では1つめ。budget。サラさん、今日の文をお願いします。
サラWe’re a little over budget this month.
あかりウィア・ア・リル……速い。オーバー・バジェット、のところしか拾えませんでした。
森田よく拾えました。over budget で「予算オーバー」です。ここ、日本語と語順が逆なんですよ。日本語は「予算・オーバー」。英語は over budget で「オーバー・予算」。
あかりあ、ほんとだ。ひっくり返ってる。
森田そして今日の勘どころは、その前についている a little です。a little over budget で「ちょっと予算オーバー」。この a little が、音になると消えかかるんです。サラさん、単語だけと、それからゆっくり通しで、お願いします。
サラBudget. Budget.
サラWe’re … a little … over budget … this month.
あかりあ、今なら分かります。リトルが、リルって聞こえます。
森田そうなんです。そして budget も、日本語だと「バ・ジェッ・ト」と3拍ですが、英語は2拍で BUD-get。最後の t はほとんど音になりません。
森田では、サラさん、トリビアをひとつ。
サラHere’s something your textbook probably won’t tell you. In the US, we also use budget as an adjective, and it means cheap. A budget hotel. A budget airline. You’ll see budget-friendly in ads everywhere. And it’s a verb, too. I really need to budget my time better.
森田アメリカでは budget が形容詞にもなる、という話でした。a budget hotel で「格安ホテル」。budget-friendly は広告の定番で「お財布にやさしい」。動詞にもなって budget my time で「時間をやりくりする」です。
あかり格安ホテルが、予算ホテル。……そのまますぎて、逆に覚えました。
persuade — 説得する(3000語レベル)
森田2つめ。persuade。サラさん、お願いします。
サラIt took me twenty minutes to persuade him to come.
あかりイット・トゥック・ミー……この出だし、何度聞いても身構えます。
森田It took me twenty minutes to … で「私が何かをするのに20分かかった」です。時間の話をするときの、決まった形なんですよ。
あかりイットが、主語じゃないんですね。
森田そう、そこが山です。it は場所取りで、中身は後ろの to 以下。persuade him to come で「彼に来るよう説得する」。〈persuade + 人 + to 動詞〉という順番も一緒に覚えてしまいましょう。
森田サラさん、単語とゆっくりを、お願いします。
サラPersuade. Persuade.
サラIt took me … twenty minutes … to persuade him … to come.
森田強いのは後ろです。per-SUADE。前の per は弱くて、ほとんど「パ」。そして真ん中に /sw/ という音が入ります。ここが日本語にない形なので、耳が滑ります。
サラNow, honestly? Americans don’t say persuade much in everyday conversation. It sounds like a courtroom, or a school essay. What we actually say is talk someone into it. It took me twenty minutes to talk him into coming.
森田会話では persuade はあまり使わない、という話でした。裁判か、作文みたいに響くそうです。ふだんは talk someone into it。直訳すると「話して中へ入れる」。つまり「丸め込む」ですね。
あかり丸め込む。そっちのほうが、私の生活に近いです。
thumb — 親指(4000語レベル)
森田3つめ。thumb。ここから4000語レベルです。サラさん、お願いします。
サラI slammed my thumb in the car door.
あかりいたっ。……意味より先に、痛さが伝わってきました。
森田slam は「勢いよく閉める」。slam my thumb in the car door で「車のドアに親指をはさんだ」です。挟むのに in を使うのが面白いところですね。
あかり森田さん、つづりの話をしていいですか。サムって、最後にビーが付いてますよね。あれ、どこへ行ったんですか。
森田いい質問です。読みません。語尾の -mb は b を読まない決まりです。thumb、climb、lamb、comb。全部、最後の b は黙っています。
サラThumb. Thumb.
サラI slammed my thumb … in the car door.
森田出だしは、舌を軽く噛む /θ/ です。「サ」ではなく「θʌm」。日本語のサ行で代用すると、thumb と sum(合計)の区別がつかなくなります。
サラOkay, thumb is everywhere in American English. Thumbs up means great, go ahead. A rule of thumb is a rough guideline. If you’re good with plants, you have a green thumb. Brits say green fingers, by the way. And thumb a ride means to hitchhike.
森田thumb は慣用句の宝庫だ、という話でした。thumbs up で「いいね」。a rule of thumb で「だいたいの目安」。a green thumb で「植物を育てるのがうまい人」。イギリスでは green fingers と指が複数になるそうです。
あかりイギリスだと指が増えるんですね。ちょっと得した気分です。
swift — 迅速(4000語レベル)
森田4つめ。swift。サラさん、お願いします。
サラThanks for your swift reply.
あかりこれは、聞き取れました。短いからでしょうか。
森田短いのもありますが、あかりさん、この文、どこかで見たことありませんか。
あかり……あ、メールだ。
森田そうです。Thanks for your swift reply. で「早速のご返信ありがとうございます」。ビジネスメールの定番です。swift は「速い」。ただし quick より少しあらたまった感じがします。
サラSwift. Swift.
サラThanks for your … swift reply.
森田音は1拍です。「ス・ウィ・フ・ト」と4拍で言うと別の語に聞こえます。最後の /ft/ が切れずにひとかたまりで来ます。
サラHere’s the honest version. In everyday American speech, we’d just say quick. Thanks for the quick reply. Swift mostly survives in set phrases: a swift response, swift action, a swift decision. But everybody knows the sound of it, because everybody knows Taylor Swift.
森田ふだんの会話なら quick で済ませる。swift は swift action、a swift response のような決まり文句に残っている、という話でした。最後がいいですね。音そのものは、みんな知っている。Taylor Swift がいるから、と。
あかり名前で覚えるの、ずるいけど、たしかに忘れないです。
flu — 流感(5000語レベル)
森田5つめ。flu。ここから5000語レベルです。サラさん、お願いします。
サラI think I’m coming down with the flu.
あかりカミング・ダウン……降りてくる、ですか。
森田come down with … で「病気にかかりかけている」です。もう寝込んだ、ではなく「来ている」という手前の段階。そこがうまい表現なんですよ。
あかりあ、なんとなく分かります。ぞくぞくしてる感じ。
森田まさにそれです。そしてもうひとつ。flu には the が付きます。the flu。ところが風邪のほうは a cold で a なんです。
サラFlu. Flu.
サラI think … I’m coming down … with the flu.
サラQuick note. Americans say the flu. Brits often drop the the and just say flu. We get a flu shot. In the UK it’s a flu jab. And man flu is a joke — it’s when a guy has a mild cold and acts like he’s dying.
森田アメリカは the flu。イギリスは the を落として flu。予防接種はアメリカが flu shot、イギリスが flu jab。最後の man flu は冗談で「男性が軽い風邪で死にそうな顔をしていること」だそうです。
あかり……心当たりがあります。父です。
森田さて、あかりさん。さっき、5000語レベルは早いのでは、とおっしゃいましたよね。
あかり言いました。
森田flu は、書き言葉の統計では5000語レベルです。でも、会話ではものすごく出てきます。つまりレベルの数字は「書かれた文章の中でどれくらい珍しいか」を表しているだけで、耳に飛んでくる回数とは別なんです。
あかりじゃあ、5000語レベルだから無理、じゃないんですね。
森田ええ。だから、この番組は難易度順には進めません。耳に飛んでくる順に進めます。
reluctance — 抵抗(5000語レベル)
森田最後、6つめ。reluctance。サラさん、お願いします。
サラShe agreed, but with some reluctance.
あかりシー・アグリード・バット……その先が、もやっとしました。
森田with some reluctance で「しぶしぶ」です。「彼女は同意した、ただし、しぶしぶ」。with some が付くと「少し」という控えめな色が乗ります。
あかり名詞なんですね。形容詞かと思いました。
森田いいところに気づきました。形容詞は reluctant。be reluctant to do で「〜するのに気が進まない」。実は、こちらのほうがずっとよく使われます。
サラReluctance. Reluctance.
サラShe agreed … but with some reluctance.
森田強いのは2つめです。ri-LUC-tance。出だしの ri は弱くてほとんど聞こえません。だから「ラクタンス」と飛び込んできます。
サラAnd to be fair, in conversation Americans almost never use the noun. We’d say: She agreed, but she wasn’t thrilled about it. Or just, but not happily. Reluctance lives in writing and in the news.
森田会話では名詞の reluctance はまず使わない。She wasn’t thrilled about it.(乗り気ではなかった)と言うそうです。reluctance が生きているのは、書き言葉とニュースの中。
あかり書く用と、話す用が、こんなに違うんですね。
森田違います。そして、この番組で扱うのは耳なので、今日はサラさんの言い換えのほうを、おみやげに持って帰ってください。
まとめ — 6文を通しで
森田では最後に、今日の6文を通しで聞きます。目を閉じて、意味が浮かぶかどうかだけ見てください。書き取らなくていいです。
サラWe’re a little over budget this month.
サラIt took me twenty minutes to persuade him to come.
サラI slammed my thumb in the car door.
サラThanks for your swift reply.
サラI think I’m coming down with the flu.
サラShe agreed, but with some reluctance.
あかり……1回目より、ずっと遅く聞こえました。同じ速さのはずなのに。
森田それが今日の成果です。音は変わっていません。変わったのは、あかりさんの耳のほうです。
エンディング
森田この番組で扱った6語は、catchspan の聴覚語彙テストの出題プールから選んでいます。自分がいま何語くらい聞き取れるのかは catchspan.com のテストで測れます。
あかりあかりでした。ありがとうございました。
サラThanks for listening. See you next time.
森田森田でした。また次回。
この回の英語の難しさ(cs)
| 指標 | 値 | ブートストラップ 95% 区間 |
|---|---|---|
| 英語の発話の 95% を覆うのに要る語数 | 5,200 cs | 4,250 〜 7,000 cs |
| 同 98% | 7,000 cs | 6,350 〜 7,150 cs |
出演
| サラ |
アメリカ・シカゴ出身の30代。元コーヒーショップ店員で、いまは日本で英語を教えている。教科書に出てこない「普段のアメリカ英語」にこだわる。 |
| 森田 |
40代の大学英語講師。学生時代は英語が苦手で、社会人になってからやり直した。だから「分からない」を絶対に笑わない。 |
| あかり |
28歳、メーカー勤務。TOEIC 600点。海外ドラマが好きだけれど字幕なしだと半分も聞き取れない。聞き手の代弁者。 |
この番組の音の作り方
| パート | 合成 | ライセンス |
|---|---|---|
| 英語(Sarah) | Piper en_US-ljspeech-high |
学習元の LJ Speech が public domain |
| 日本語(森田) | Style-Bert-VITS2 aivis-aida |
CC BY-SA 4.0・表示が必須 |
| 日本語(あかり) | Style-Bert-VITS2 aivis-morioki |
CC BY-SA 4.0・表示が必須 |
クレジット表記: BERT: ku-nlp/deberta-v2-large-japanese-char-wwm (CC BY-SA 4.0)
自分がいま何語くらい聞き取れるか
この回の6語は、catchspan の聴覚語彙テストの出題プールから選びました。テストは https://catchspan.com/app/test で受けられます。「知っている語の数」と「自然な発話から復元できた割合」を別々に出します。

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