映画カバー率

最終更新: 2026-09-06 / ← /facts

⚠️ このページは 2026-09-06 の単位移行(BNC/COCA flemma、決定ログ参照)にもとづく値です。
テスト本体への反映は次版のデプロイ時です。それまで結果画面の cs は旧単位(NGSL)のままです。

何を計算したか

「映画・TV の会話を 95% 聞き分けるには、頻度順に上から数えて何語知っている必要があるか」を、
私たち自身の単位(flemma)で数え直しました。

これまで引用していた「映画は約 3,000 語族で 95%」(Webb & Rodgers 2009)は語族という別の単位の数字で、
私たちの cs とは足し引きできませんでした(/facts/unverified に書いてきた未解決事項)。
語族は「know を知っていれば knowledge も unknown も知っているはず」と数える単位ですが、
日本人学習者のリスニングではこの前提が成り立たないことが実測されています
(基語と派生形の重なりは 25.1% — Kim, Stoeckel & McLean 2023, The Modern Language Journal,
doi:10.1111/modl.12863)。
そこで語族をやめ、耳で聞いて別の形は別の語として数える(flemma。屈折形だけをまとめる)ことにし、
映画側も同じ単位で数え直しました。

結果

目標 必要な語数(頻度順・flemma)
映画・TV の 95% カバー 約 3,330(正確には 3,334)
98% カバー 約 8,750(正確には 8,750)
  • 測定の上限は 8,750(= 98% カバー地点)。95% ラインも 98% ラインも測定の射程内に入りました。
    旧単位では映画は天井(2,809)の外にあり、「測れない目標」でした。
  • この 8,750 語を 核(コア) と呼び、cs の分母にしています。
    1k–5k 帯には全部で 15,360 語ありますが、分母を全部にはしていません。理由は 2 つです。
    (1) ここより下の語は映画・TV にほぼ出てこないので、数えても目標との距離が変わりません。
    (2) 出題した語の頻度からいちばん遠いところまで推定を伸ばすと、推定の前提
    (「知っているかどうかは頻度でおおむね決まる」)が崩れたときの誤差が大きくなります。
    合成学習者での実測で、分母を全 15,360 にすると真値から最大 −19.3% ずれた条件が、
    核に閉じると最大 +8.1% に収まりました(/facts/scoring)。
  • 数え方: 全 flemma を頻度順に並べ、上から N 語を知っている人が
    映画・TV の発話トークンの何%を識別できるかを累積して、95% / 98% に届く N を探しています。

計算の材料と規約

項目 内容
発話コーパス SUBTLEX-US(米映画・TV 字幕 8,388 本、49,719,560 トークン。Brysbaert & New 2009)
語彙リスト Nation の BNC/COCA 語族ファイル(basewords 1.3.0)を flemma 規則 v1.2.0 で畳んだもの
固有名詞・間投詞など Webb & Rodgers と同じく「既知扱い」(Nation の補助リスト 31–35。トークンの 2.93%)
短縮形 SUBTLEX はアポストロフィで分割する(don’t → don + t)ため、破片を対応する機能語に写像
検算 同じ材料を語族単位で数えると 2,000 語族 95.3% / 3,000 語族 96.6% となり、文献(映画 318 本で 3,000 語族 95.8%)と同じ範囲に落ちる

数字の確かさと、感度

  • 49.7M トークンでの標本誤差は無視できる大きさです(±10 flemma 程度)。数字を動かすのは規約の選び方で、
    それは上の表に固定してあります。
  • 数え方の版を上げると数字が動きます。 2026-09-06 に規則 v1.0.0 → v1.2.0 で
    「畳み込みを 2 段以上たどる」「どちらのコーパスにも現れない語形を母集団から外す」を直し、
    95% ラインは 3,847 → 3,334、1k–5k の総数は 15,932 → 15,360 になりました。
    規則の版は list_version として結果に併記します。
    🔒 表の数字は tools/movie-coverage.py が毎回突き合わせて検算しています。手で書き換えると落ちます。
  • 感度: 固有名詞・間投詞を「既知扱い」にしない場合、95% ラインは約 8,100 flemma まで動きます。
    既知扱いは文献の標準規約ですが、この依存性は隠しません。
  • コーパスが字幕(発話の書き起こし)であること、「頻度順に上から知っている」という理想化を
    置いていることも、数字の性質として書き添えます。

この数字が約束しないこと

🔒 これは語彙カバー率であって理解度ではありません。カバー率 95% で「日本語字幕なしで分かる」かは
係争中の主張で、語彙知識と視聴理解の相関は rs=.39 程度にとどまります(/facts/unverified)。
表示に使うときの文言は「語彙カバー率が 95% に届くにはあと約○○語」に限定し、理解は約束しません。

🔒 「上から順に知っている」という理想化も約束ではありません。 実際の学習者の語彙は頻度順に
きれいに並んでいません。ここで言う「あと○○語」は「頻度順に上から数えたときの語数の差」であって、
「あなたが次に覚えるべき語がちょうど○○語ある」という意味ではありません。

出典

  • Brysbaert, M., & New, B. (2009). Moving beyond Kučera and Francis. Behavior Research Methods, 41(4).
    SUBTLEX-US は出典明記で利用可。
  • Nation, I.S.P. (2017). The BNC/COCA word family lists.(CC BY-SA 4.0 / GPL v2-3)
  • Webb, S., & Rodgers, M. P. H. (2009). The lexical coverage of movies. Applied Linguistics, 30(3).
    doi:10.1093/applin/amp010
  • 計算スクリプトはリポジトリの tools/movie-coverage.py(入力・規約・検算込みで再現可能)
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