テキストだけで答えが分かるか

最終更新: 2026-09-05 / ← /facts

なぜ検証が要るか

Stage B の断片で、対象語が音を聞かなくてもテキストだけから復元できてしまうと、
測っているものが聴解からリーディングに変わります。

She didn't have a ___ to say goodbye.   ← 音を聞かずに解けます

B4 は「事前に音なし・テキストのみで推測可能性を検証し、母語話者/上級者が当てられる項目は不採用」を
要求しています。

🔒 その事前テストは実施していません

cloze_pretest_pass を true にできる項目はゼロです。

代わりに実施したのは、実際の書き手が同じ空所に何を置いたかの測定です。

断片の対象語を伏せ、Google Books N-gram(最大5-gram)にワイルドカード検索をかけ、
補完語の分布の中で対象語が何位・何%を占めるかを取る(124項目すべてで取得)

対象語が最頻補完だった7項目を差し替えました。

night 98.8%   whole 68.7%   prize 49.1%   annual 45.5%
medical 44.5%   government 32.0%   stay 26.3%

we stayed up all night は補完の 98.8% が night でした。音を聞かずに解けます。

🔒 これは B4 を満たしていません

書き言葉コーパスの補完分布であって、母語話者の反応ではありません。
落とす根拠には使えますが、通す根拠には使えません。

同時に分かったことがあります。エージェントの内省による「要差し替え候補20件」は、
20件中19件がコーパスでは予測不能でした
(what a long day の day は6位・4.5%、
under the left wing の wing は9位・3.6%)。逆に「当てられない」とされた行から
最頻補完の項目が6件出ています。内省スクリーニングは方向を含めて当たっていません。

LLM3体に実際に埋めさせました(2026-09-05)

内省(「当てられると思うか?」)ではなく、対象語を伏せた124断片だけを渡して空所を実際に埋めさせる
検査を、独立した3つのモデルで行いました。上位5語を確率つきで出させ、対象語の順位を集計しています。

指標 全体(124) 1k(40) 2k(42) 3k(42)
3体中2体以上が対象語を1位に置いた 10 7 1 2
2体以上の上位5語に入った 28 18 2 8
どの回答者の上位5語にも入らない 85 15 37 33

強く当てられた10項目: day(what a long ___、3/3)age(at about his ___、3/3)
past(that’s all in the ___、3/3)give again apart together unknown actually grass。

語ではなく断片を書き直しました。当てられるのは語の欠陥ではなくフレームの欠陥だからです
(10項目のうち7項目が1k帯にあり、落とすと帯が33語になります)。
書き直し後の再検査では、2体以上が1位に置いた項目は0になりました。

🔒 LLMは非常に上手な読み手なので、これは推測可能性の上限です。
LLMが上位5語にも入れなかった85項目を人が当てる可能性は低い、という向きにだけ使えます。
逆に「LLMが当てなかったから安全」とは言えません。B4 は依然として未実施です。

haiku を 110 回走らせて、項目ごとの確率を測りました(2026-09-05)

前節は 3 体に 1 回ずつでした。今回は 毎回まっさらな haiku のセッションに 124 問すべてを解かせる試行を
110 回
繰り返しています(1 試行 = 協力者 1 名ぶん、出題順は毎回シャッフル、回答は 13,640 件)。
これで項目ごとに「テキストだけで当てられる確率」が、信頼区間つきで出せます。

全体の正答率は 3.42%。124 項目のうち 95 項目は 110 回とも 1 度も当てられませんでした
(95% 信頼区間の上限は最大でも 3.4%)。残りははっきり分かれます。

確率 95%信頼区間 対象語 断片
78% 70-85% ease he’d do it with ____
68% 59-76% past he never talks about his ____
62% 53-70% deeply he’s ____ involved in it
51% 42-60% fact in ____ it’s over
26% 19-35% night the ____ was very cold
26% 19-35% wing under the left ____
25% 18-34% together they went in ____
11% 6-18% country out in the ____
11% 6-18% again would you say it ____
10% 6-17% age at that ____ you don’t care

残る 14 項目は 1〜7%、その下の 95 項目は 0% です。

ここで挙げた 7 項目は断片を書き直しました。書き直し後の再測定(同じ 110 試行)はこうなりました。

対象語 書き直し前 書き直し後
ease 78% 0%
past 68% 0%
deeply 62% 0.9%
fact 51% 6.4%
night 26% 0%
wing 26% 0%
together 25% 0%

全体の正答率は 3.42% → 0.81%、確率 20% 以上の項目は 0 件になりました。
いちばん高い項目でも at that ___ you don't care(age)の 12.7% です。
124 項目のうち 99 項目は 110 回とも 1 度も当てられていません。

🔒 書き直しは悪化させることがあります。in fact it's over(51%)を that's a known fact に
変えたところ 99.1% になりました。in ___ を避けたつもりで、より強い連語に移っただけでした
(the ___ was ignored に再修正して 6.4%)。書き直したら必ず測り直すこと。

回数が足りているかは、110 回を奇数回と偶数回に割って確かめました。項目ごとの推定値の相関は
0.975、「10% 以上か」の判定は 124 項目中 120 項目で一致しています。これ以上回しても順位は動きません。

🔒 これは人の結果ではありません。モデル 1 種類の補完分布であって、母語話者の反応ではない、という
前節の限界はそのままです。落とす根拠には使えますが、通す根拠には使えません。

10 名の事前テストは、この確率のもとで何をするか

測った確率を各項目に当てはめて、「10 名中 k 名以上で落とす」を回すと何が起きるかは計算できます。

閾値 落ちる項目数 うち確率 5% 未満の巻き添え 確率 20% 以上の取り逃し
1 名以上 13.3 件 2.1 件 0.15 件
2 名以上 8.0 件 0.2 件 0.67 件
3 名以上 5.8 件 0.0 件 1.54 件
5 名以上 3.7 件 0.0 件 3.29 件

2 名以上は、この項目バンクに対しては妥当な線でした。巻き添えが 0.2 件しか出ないのは、
95 項目の確率が 0 に張り付いているからです(無害な項目が一様に 5% あるなら巻き添えは 11 件になります)。
ただし 2 名以上でも、確率 20% 以上の項目を平均 0.67 件取り逃します。
10 名という規模では、7 件ある「当てられる項目」を全部は捕まえられません。

閾値の議論より先に、当てられると分かっている 7 項目を断片ごと書き直すほうが効きます。
書き直したうえで 10 名の事前テストを回せば、閾値がいくつでも結果は変わらなくなります。

何をすれば埋まるか

英語母語話者または上級学習者に、音声なし・テキストのみで提示して当てさせる。
配布用のフォームは用意してあります(124項目、機械予測可能性の高い順)。

判定閾値は提案であって承認待ちです。B4 は「当てられる項目は不採用」としか書いていないので、
何割で切るかは仕様側の決定です。上の測定は、その決定の材料であって決定そのものではありません。

もう一つの手として、公開後の実験に「テキストのみ条件」を1本足せば、
実受験者から取れます。5名の別テストより解像度が高くなります。

Copied title and URL