何を使っているか
合成音声(TTS)です。単一の音声・単一の話速に固定しています。
🔒 これは検証されていません
§4.2 が TTS に課している3条件のうち、③(公開前に小規模で人間録音版との相関を取る)は
まだ実施していません。したがって 「ネイティブ録音版と難易度が同一とは検証されていない」と明記します。
⚠️ 2026-09-05 訂正:このページは以前、Guo (2026) Languages 11(1), 17 を
「人間録音とAI音声でスコアが同等にならなかった」根拠として引いていました。引き方が誤りでした。
Guo が比べたのは同じ台本の人間録音とAI音声ではなく、既存試験(CET-4、人間のプロ録音)と
ChatGPT-4o が別に作ったテスト(Murf AI で音声化)です。平均 4.58 vs 7.73 は項目が違うテストの得点差で、
著者自身が差の原因として挙げているのはテストの短さと項目設計のばらつきです。音声の効果は分離されていません。
同一台本で比べた研究では、得点は同等というのが一貫した結果です。
| 研究 | n | 結果 |
|---|---|---|
| Choi & Zu (2022) ETS RR-22-05(Amazon Polly) | 653 | 全項目で項目パラメータの95%CIが重なる。テスト特性曲線の差は尺度の1%未満 |
| Bione & Cardoso (2020) LLT | 29 | 理解 4.57 vs 4.74(p=.147)、書き取り 59.7% vs 55.1%(p=.878)。自然さの評価だけTTSが劣る |
| Nguyen (2024) | 43 | 差 −.02(p=.963) |
ただし、これらは理解問題や語の識別での比較で、縮約そのものを測る設計での比較はありません。
Choi & Zu は全音源を専門家が試聴し、不自然な休止・抑揚を直したうえで実査しています。
🔒 語をまたぐ同化は、この音声に入っていません(2026-09-05 実測)
did you → /dɪdʒə/、had to → /hætə/ のような語をまたぐ同化を、この生成系は作れません。
- Piper は espeak-ng が作った音素列を読みます。espeak-ng は
a / an / the / to / ofを
語彙的に弱形化しますが、語をまたぐ同化・弾音化・h脱落の規則を持ちません。
学習元の LJ Speech は1話者の朗読なので、モデル側が補う根拠も薄いものです。 - 台本側で固定する手を2通り実測しました。どちらも失敗しました。
音素直接入力 [[h@l'oU]] → 0.174秒("hello" は 0.511秒)。括弧の中が読まれていない
綴り置換 didja / did ya / dontcha 他16種 → 尺比 0.95〜1.14
このリポジトリの機械検算の基準(縮約が起きていれば尺は 0.88 倍以下になる)を
1つも満たさない = 縮約として読まれていない
したがって、台帳で「同化」に分類していた31項目は、誤答分類を持たせていません。
項目としては使えます(対象語は普通に鳴っています)が、落としたときに
「連結で落ちた」と診断する根拠がないためです → /facts/unverified
設計上の制約
| アクセント | General American |
| 話速 | 全項目で固定 |
| 非流暢性 | 入れません(uh, um, 言い直し) |
| 縮約・連結 | 残します。ここが測定対象です |
🔒 縮約を消すと構成概念が壊れます。Kul (2024) の中心的所見は
「B2+ の学習者が、確実に知っている高頻度語ですら自然発話の縮約形では53%しか同定できない」
であり、この失敗は縮約を消したら観測できません。
縮約は綴りで担保しています。TTS は綴りに引きずられるので、should have と書くと
/ʃʊd hæv/ と読まれる可能性が高い。助動詞+have の7項目は短縮形(should've)を
台本に固定しています。
⚠️ 残る項目の弱化は綴りでは制御できません。上の実測で「同化」31項目は落としましたが、
was / at / some / put it のように espeak-ng が弱形化するかどうかが確実でない21項目が残ります
(連結の3項目を足すと24項目)。
🔒 この24項目は、鳴っているか確かめずに出します(2026-09-05 決定)
聞いて確かめる工程は「行わない」と決めました。全項目を「判断できない」として記録し、
現行の合成音声の出力のまま公開します。理由は3つです。
- 耳を使わずに測る道具が、この型には使えません。縮約の機械検算(尺比 0.88 以下)は
綴りの違う2つの形を比べるやり方です。should have→should'veなら比べられますが、
at thatの弱形には比べる相手の綴りが存在しません。 - 聞いて「鳴っていない」と分かっても、直す手段がありません。台本側で固定する2通りは
上のとおり実測で失敗しています。残るのは「その項目を捨てる」か「そのまま出す」かの二択です。 - 捨てると弱化の項目が 56 → 35 に減ります。測れているか不明な項目を消すことは、
測れていないことの証明にはなりません。減るぶん確実に測定は粗くなります。
したがって、この24項目は縮約が鳴っているか分からないまま出題します。
誤答分類(function_word / linking)はそのまま付けますが、
この24項目については分類の根拠が弱いことをここに書いておきます。
音の代わりに、台本の側を人に見てもらう工程は用意しました。英語母語話者に
「示した位置は、普通の速さで話せば実際に縮約されるか」を判定してもらいます。
これは合成音声が鳴らしているかの検証ではなく、そもそも縮約が起きる位置を指しているかの検証です。
→ /facts/unverified
発音表記
CMUdict 0.7b(パブリックドメイン、General American)から機械変換した表記を、
生成音声の検品用の参照として持っています。先行版は英国式表記が52項目、欠落が3項目ありました。
縮約位置の分類を 3 軸にしました(2026-09-06)
これまで縮約の型を 1 つの分類(連結・脱落 / 弱化・摩擦音化 / 同化)で持っていましたが、
性質の違うことを 1 軸に潰していたので分けました。旧分類は台帳から機械的に写しただけで、
台本に短縮形がある 47 項目のうち 27 項目を「連結」と数えていました。
| 軸 | 何を表すか | どう決めるか |
|---|---|---|
| A 台本の短縮形 | 読み上げる台本に they'd he'll didn't のような短縮形の綴りがあるか |
台本から機械的に決まる |
| B 語をまたぐ追加の変化 | その位置で、さらに同化・弾音化・連結が起きるか | 2 つの言語モデルの較正済み判定 |
| C 機能語の弱形 | 縮約位置に the at was のような機能語があるか |
機能語表から機械的に決まる |
🔒 どの軸も立たない項目は出しません。立たないなら、そこは縮約位置ではないからです。
2026-09-06 に went directly came naturally の 2 件がこれに当たり、
we couldn't reach you directly / it didn't come naturally to her に書き直しました。
結果画面には 1 つの分類として出します。優先順位は
語をまたぐ変化 > 短縮形 > 機能語の弱形(難しい過程が名前を取る)。
軸 B が「未決」の項目を「変化あり」に丸めることはしません。
軸 A × 軸 B の内訳(206 項目・2026-09-07 実測):
| 追加の変化あり | 追加の変化なし | 未決 | |
|---|---|---|---|
| 台本に短縮形あり | 81 件 | 35 件 | 22 件 |
| 台本に短縮形なし | 63 件 | 5 件 | 0 件 |
結果画面に出す 3 分類は 語をまたぐ変化 144 / 短縮形 57 / 機能語の弱形 5 です。
「短縮形あり・追加の変化なし」35 件について。 これらの項目の縮約位置は台本に現れる短縮形
(they'd he'll it's)で、語をまたぐ追加の変化(同化・弾音化)は伴いません
(2 モデルの較正済み事後確率 ≤ 0.10)。
短縮形そのものの聞き取りは学習者にとっての難所なので項目としては保持し、
「語をまたぐ変化」とは別に数えます。
⚠️ 逆に didn't you のように短縮形かつ追加の変化を伴う位置は 81 件あり、
2 モデルとも高い率で変化を検出しています。短縮形だから変化が無い、ということではありません。
🔒 22 件は未決です。内訳は、モデル間で判定が割れたもの 14 件と、
断片を書き直したあと測り直していないもの 8 件(4k-sparkle 5k-culminate など。
テンプレートが非文を作っていたのを 2026-09-07 に直した分)です。
どちらも「変化あり」に丸めず、未決のまま数えます。
🔒 この検査の実力(較正の実測値)
| モデル | 平叙(want to) |
短縮形(they'd) |
弱形(was a) |
負例 |
|---|---|---|---|---|
| haiku | 95.7% | 76.8% | 53.6% | 0.2% |
| sonnet | 99.7% | 62.0% | 21.0% | 0.0% |
弱形(綴りに現れない縮約)の検出力が低いことが、この検査の一番の限界です。
sonnet では 21%、haiku でも 53.6% しか捉えられません。
理由ははっきりしていて、eye dialect(wanna gonna のような話し言葉の綴り)には
弱形を書き表す慣用がないためです。didn't の /t/ 脱落に対応する綴りは存在しません。
だから弱形の項目は「未決」に落ちやすく、そこは正直に未決として出します。
負例の誤検出は両モデルとも 0% 台なので、「変化あり」と出たものは信用してよい一方、
「変化なし」は「検出できなかった」を含みます。
🔒 これは「位置に過程があるか」の分類であって、その過程が音声で実際に鳴っているかは別問題です。
2026-09-05 に「音声は聞いて確かめない」と決めているので、そこは下の「AI 代替の天井」で引き受けます。